春の雪の思い出


春の雪は午前中いっぱい本格的に降り続いた。
土曜日の代休の今日、私は平日にしかできない用事をいくつも抱えていた。
朝8時半に期限が切れたパスポートの新規取得の手続きで大宮まで出かけた。
9時過ぎ、大宮駅からパスポートセンターへ向かう途中でみぞれは雪に変わった。
「春の雪」に、三島由紀夫の小説「豊饒の海」全4巻の第1巻目を思い出した。
三島由紀夫はあの作品を最後に1970年11月25日、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決した。
忘れもしない、私の青春真っ只中、大学3年生の時である。
あの頃、三島由紀夫ノーベル文学賞の候補に上っていた。もう一人の人気作家、
石原慎太郎との政治をめぐる対談も夢中で読んだ。週刊「平凡パンチ」には三島が
裸でポーズをとった写真が載った。映画「人斬り」にも出演した。
ストイックで武士道の精神を持つ「三島」にあこがれていたわたしは、自分の住む
学生寮の近くのボディビルセンターに通い自らも肉体を鍛えた。
今日の雪が三島由紀夫とあの頃の自分を思い出させてくれた。